千葉 昇 副校長先生
「松樹千年翠 不入時人意」という言葉があります。「時の人の心に入らずとも、変わらぬものの価値を見失うことなかれ!」という呼びかけです。四季の移ろいとともに変化にばかり目を奪われがちな私たち、翠を1年中保ってしっかり根を張り続ける松に例えたこの意は、「変わらぬものを振り返って、確かな今を見つめること」を示唆しています。しかし千年を生きる松も、その翠は毎年新しい変化の営みを繰り返しています。
この4月、本校は、新たな学校史を刻み始めました。「国際」をキーワードにしたこの改革の実施は、急激に変化し続ける現代社会の中にあって、附属学校に課せられた「伝統と特色ある学校の創造」という使命です。
国際化が一層進展する現状において、大学の中期目標・計画に沿った小学校改革は、世界に拓く基礎的な学力と豊かな心を培い、グローバルな視野を育む「国際教育」の特色を持つ学校づくりです。
それは、多文化共生という国際性の涵養をそなえ、豊かな心と一人一人が個性を持ち、アイデンティティ溢れる人間力と実践力ある児童像を標榜するものです。これは、「豊かな学力」(確かな学力と豊かな心)で永く積み上げてきた教育課程の実践・実証研究の成果を、「国際社会に活きる豊かな学力」として進化・発展させることです。
改革にあたっては、4つの柱を掲げてきました。
「創造と確かさ」を求めて、豊かな学力の国際化を構築し、「対話と交流」では、共生を志向したコミュニケーション力と心の育成を重視しています。「個への対応と充実」では、一人一人の個性重視と新個別学習の開発を、そして「実践力」としては、子ども自身の問題解決における実践力(自ら発見し、体験から学び求め、自ら表現する)の育成をめざしています。不確実な未来社会の中でも、変化に対応し、世界に自らを拓く豊かな子どもを能力と心の両面から育てることを求めています。
「伝統と未来の調和」を求めることは、子どもの中に伝統の息吹を再確認しながら、未来に活きる力を特化する「松樹千年翠 不入時人意」の営みです。